5ふじのくに茶の都ミュージアムからほど近い場所にある牧之原公園。園内には茶祖の栄西禅師像があり、お茶の町である金谷のシンボルとなっているそうです。

みなさん、突然ですが「カタクリ」という花をご存知でしょうか。

私たち夫妻が訪れた3月末から4月初旬にかけて、この珍しい花がちょうど見頃であるという情報をタクシーの運転手さんから伺いました。ふじのくに茶の都ミュージアムの見学を終えた後、この珍しい花を一目見ようと牧之原公園へ。

 

島田市天然記念物のカタクリを愛でる

普段は立入禁止であるカタクリ園が一般公開されている期間は3月27日から4月4日までだそうで、本当にタイミングが良くラッキーでした。

園内に足を踏み入れると、急斜面を埋め尽くすかのように広がるたくさんのカタクリが目に入ります。約2100平方メートルの面積内に、なんと約1万株も自生しているそうです。

 

カタクリは、地中深くにりん茎(地下茎の一種)のあるユリ科の多年草です。

花が完全に開き切るのは午前10時頃から正午までの間ですが、私たちが訪れた午後15時頃にもしっかりと花を咲かせた姿を見せてくれました。 下向きに咲く紅紫色の小ぶりな花は、ユリによく似た形状をしています。

 

地面すれすれから伸びている葉には、紫色のまだらの模様があります。

 

一口に紅紫色といっても、よく観察してみると花ごとに個性があり、青みがかかった紫色、ピンクに近い紫色、白っぽいものまで、実にバラエティ豊か。

 

 

カタクリ豆知識あれこれ

毎年桜の季節と同じ時期に花を咲かせ、桜が散る頃にはカタクリの花も散ってしまいます。5月になると葉も枯れ果て、5月中旬から9月末までは、地下で休眠状態となります。つまり、地上に姿を現す期間はたったの4〜5週間程度で、開花期間はさらに短く、2週間ほどになる儚い花…ということです。

 

カタクリという名前からも想像できるように、かつてはこの茎から抽出したデンプンを片栗粉として調理に用いていたのだとか。ただし精製量がごくわずかであるため、近年はジャガイモやサツマイモから抽出したデンプン粉が用いられる片栗粉が主流となっています。

 

大井川流域での自生地は極めて少なく、ほとんどが牧之原台地周辺に集中しています。以前は牧之原の各所に群生していましたが、徐々に減少し、群生地はここの斜面だけとなってしまいました。

昭和60年には島田市の天然記念物に指定されました。近年では『島田市金谷野の花の会』のメンバーの方々が手厚い保護活動を続けています。

 

 

大パノラマの展望スポットより大井川流域を眺める

牧之原公園は、牧之原台地のもっとも高台に位置する島田市の絶景スポットとしても有名です。南アルプスの山々、雄大に流れる大井川、そして周辺に広がる茶畑と住宅街が眼下に広がる光景は、まさに圧巻、その一言に尽きます。当日は少々曇り気味であったため、富士山の姿を確認できなかったことが唯一の心残り…。

また、牧之原公園からの夜景は『日本夜景遺産』に登録されているとのこと。絵画のように広がる大井川の夜景、いつか見てみたいものです。

もし春の初旬に金谷地区を訪れることがありましたら、牧之原台地方面へと少し足を伸ばして、眼下に広がる大井川流域の絶景と、このシーズンにしか見られないカタクリの花をぜひ見てみてください。可愛らしい小さなユリのような花の姿に、きっと癒しをもらえるはずです。