こんにちは、Asubi planning ライターのゆかです。
大井川流域の逸品と、それに携わる人々の物語をご紹介するブログを担当します。よろしくお願いします。

今回ご紹介するのは、知る人ぞ知る大井川の地酒、“かなや日和”。
酒場の店主の地元愛が生み出した逸品をレポートします!

 

島田市金谷、五和(ごか)の町に6代続く老舗『中屋酒店』へ

大井川鐵道大井川本線「五和(ごか)駅」を出て北へ。昔の商店街の面影が残る細い道を歩くこと約5分で『中屋酒店』さんに到着。

木造平屋の、一見小さな酒屋さん。

「こんにちはー」
店内をのぞくと、島田の地酒やお醤油、おつまみやお菓子が所狭しと!なんだか懐かしい雰囲気ですね。

島田市内に江戸時代から続く老舗酒蔵『大村屋酒造』さんの地酒をはじめ、スタンダードから通好みまで、いろんな銘柄が並んでます…が、今日の目的はこちら!

“つくり手の顔の見える地元の酒 かなや日和”。

「いらっしゃい。これね、かなや日和」

こちらが6代目店主の片岡さん、“かなや日和”の生みの親です。

…見た目はちょっと怖そう?いえ、写真のせいですかね、とってもやさしい方ですよ。奥さんとご両親と一緒に『中屋酒店』を切り盛りしています。

 

酒屋であり酒場。ご近所さんに大人気のお店です

ところでこの『中屋酒店』さん、実は売場の奥が酒場(あくまで「酒場」。「居酒屋」ではありません。店主より)になっていて、夕方には近所の常連さんが集まる人気のお店。

代々酒類の販売を手掛けてきたお店だったところに「おいしいお酒をたのしく飲める場所を」と、先代がこの酒場を作っちゃったんだそうです。

営業時の様子がこちら。

つまり、酒場で出すお酒も自分たちで作ってしまったというわけ。こんなにぎやかなお店のオリジナルのお酒なら、おいしいに決まってますね!

さっそく、奥の酒場でお話を伺うことにしました。

 

五和に受け継がれてきたお酒造りへの想い

現在6代目の『中屋酒店』。もとを辿ると、現在の店舗から少し離れたところにある造り酒屋さんの家系だそう。水に恵まれた大井川周辺は、かつては米作りも盛んで、『中屋』さんの田んぼもその名残。

酒屋をしながらも、地元のお米を使ったお酒造りにはずっと興味があったそうです。

そんなある年、稲作用の機械が壊れたことをきっかけに、近所の農家・大池さんにお米作りを代行してもらうことに。

実る稲穂を眺めながら、二人で「いつかここの米で酒を作れたらおもしろいよなぁ」と話していたところ、『大村屋酒造』さんで食用米でもお酒を作ることができると聞き、試してみることにしたのです!

 

100%五和産米!味にもこだわったお酒を実現!

そうして出来上がったのが、『中屋酒店』オリジナルの“かなや日和”。

ちょうどその頃、島田市との合併により、もとの町名「金谷」が消えてしまったこともあり、「かなや」の名前をお酒に込めたのでした。

「どんな料理にも合うようにしたかったんだよね。みんなに飲んでもらいたいもんでね。」
という片岡さん。できたお酒は、まず酒場でお客さんたちに味わってもらったそうです。

新しくここの地酒ができました!なんて振る舞われたら…うれしいですよね!

それから約10年。“かなや日和”は今や『中屋酒店』さんにはなくてはならない商品。酒場のお客さんも必ず注文する定番のお酒なんですよ。

 

『中屋酒店』さんの地元への愛は、ぜひラベルをご覧ください!

そんな『中屋酒店』さんのお酒と地元への愛情が詰まった“かなや日和”。私も(取材中ですが、これも仕事!)ちょっといただいてみました。

…ウン、すっとやさしい飲み心地。ふわっとお米の香りが感じられて、このお酒なら食事も進んじゃいそうです…!

ところで、“かなや日和”のこのラベル、手書きで素敵だと思いませんか?これ、片岡さんの直筆なんですよ!

「雄大な大井川から流れる金谷・五和地区で
 苗づくりから丹精込めて育てたお米を
 地元酒蔵にて自家精米・醸造
 『五和産米』100%
 つくり手の顔の見える地元の酒
 かなや日和
 生産者 大池道儀 中屋酒店 ……」

そう、ここに“かなや日和”への『中屋酒店』さんの想いが全部書かれているんです。

「お酒のラベルって結構かっこよくしたいじゃん。どんなのがいいかいろいろ考えたんだけど、試しに伝えたいことを書いてったら…こんな感じが案外いいんじゃないかってことになって」

ラベルの続きには…

「『ちーっとのんでごー』目を閉れば…
 のどかで自然溢れる里が想いうかぶ
 心安らぐ日本酒が生まれました」

「ちーっとのんでごー」とは、静岡の方言で「ちょっと飲んでみて」という意味。のどかな金谷で生まれた気取らないお酒。“ちょっと飲んでみて、おいしさがわかるから!”この言葉には、片岡さんのそんな想いが凝縮されているんですね!

 

さらに、お手頃な価格も愛の表れなんですね。

“かなや日和”を作るにあたり、片岡さんは味だけでなく、価格にもこだわりを持っていました。
精米率60%の純米酒でありながら、一升瓶で2,000円というお手頃価格。まずは地元の人に気軽に飲んでもらえるように、という気持ちの表れですね。

毎年醸造できる量に限度があるため、“かなや日和”が買えるのは『中屋酒店』さんだけ。一升瓶のほかに4合瓶(1,100円)もあるので、お土産にもおすすめですよ。

とりあえず『中屋酒店』の酒場で1杯どうぞ!

『中屋酒店』さんの愛情が詰まった“かなや日和”。味わうなら、ぜひ『中屋酒店』の酒場でどうぞ!

明るいうちから近所のおじいさんたちが集まってきて、その後には若者から女性まで、入れ替わり立ち替わり、たくさんの人がおいしいお酒と料理、あたたかなお店の雰囲気を楽しんでいます。

お客さんのほとんどは地元の方ですが…一見さんも大丈夫!すぐにまわりの席の人と仲良くなれますよ。

「お酒に合うと思うものを作っているうちに増えちゃったの」
とおかみさんが言うとおり、手作りの料理も種類がとっても豊富!“かなや日和”と一緒にぜひ楽しんでくださいね。

さて、片岡さん直筆の“かなや日和”のラベルの最後にはこうあります。

「『今日はええあんばいだなー』
 そんな日は…『かなや日和』」

みなさんもぜひ!

 

中屋酒店

住所…島田市横岡新田228
営業時間…酒屋8:00~21:00 酒場 16:00~
P…8台あり
定休日…火曜
TEL…0547-45-3208